ぱと隊長日誌

ブログ運用もエンジニアとしての生き方も模索中

デブサミ2019「【15-B-2】メンバーの成長とチャレンジのためにエンジニアリングマネージャーとして大切にしたこと」聴講メモ

はじめに

Developers Summit 2019 (Developers Summit 2019)
【15-B-2】メンバーの成長とチャレンジのためにエンジニアリングマネージャーとして大切にしたこと
スピーカー:山本 学 [ヤフー]
の聴講メモです。

メモは口頭説明を中心にまとめています。資料を併せてご参照ください。

Twitterのつぶやきがtogetterでまとめられています。併せてご参照ください。
デブサミ2019【15-B-2】メンバーの成長とチャレンジのためにエンジニアリングマネージャーとして大切にしたこと #devsumiB - Togetter

【参考】としている個所は私が挿入しています(補足や参考資料など)。登壇者の講演内容ではありませんので、その旨ご了承ください。

まず伝えたいこと

マネジメントの定義「組織の為に組織の人たちをいきいきとさせ高度な成果を上げる」はドラッカーの言葉を引用した。

そもそも

小さい頃のブロック遊びが楽しかったように、モノ作りは根源的に楽しいこと。だからエンジニアリングは楽しいといえる。

マネジメントに対する印象

マネジメントへの興味がまだ薄そうな周囲の若者にマネジメントへの印象を聞いてみた。

この中で「体制側」と出てくるが、これはプレイヤーには決定事項のみが伝えられ、マネジメント側が全て決めている。その間には越えられない一線がある。ということらしい。

このアンケート結果を受けて、発表の内容を変えることにした。当初はhow-toを中心に資料をまとめていたが、それよりもまずはこのマイナスな印象を払拭することにした。

パフォーマンスの方程式 Robbins (2001)

チームのパフォーマンス=
チームが本来持つ生産性
+プロセスゲイン(協働作業によるシナジー効果・適材適所の役割分担)
+プロセスロス(協働作業による負のシナジー効果・コミュニケーションコスト)

この方程式からチームのパフォーマンスは個人の能力以外にも影響を受けていることが分かる。

また、プレイヤーとマネジメントでは成果の出しどころが違う。

  • プレイヤーの成果の出しどころ
    • チームが本来持つ生産性
  • マネジメントの成果の出しどころ
    • プロセスゲイン
    • プロセスロス

Ep2.はじめてのピープルマネジメント

評価の際はする側とされる側で組織の評価制度のすり合わせから始めた方が良い。面談をしていると、この認識のズレていることが意外と多い。

達成感を感じる瞬間/成長を感じる瞬間

マネジメントの達成感は対象がチームなのでちょっと感じにくいところはある。

だが、(自分の成長だけでなく)メンバーの成長も感じられることをふまえると、もしかするとメンバーよりも達成感を感じやすい面もあるかもしれない。

成長の支援

個人を成長させることができれば、チームとしての生産性も上がる。

なにを/どう学べばいいか分からない

ティーチングが有効。エンジニアリングマネージャーとして、組織での評価や市場価値を上げるために何を学ぶと良いかを教える。これにはエンジニアとしてのバックグラウンドが活きてくるはず。

学ばざるを得ない状況を作る。このままではいけない、周囲に迷惑をかける、という思いがあると動く。
ただ、危機感で動くと初速は出るが、その勢いを継続させるにはポジティブな体験が必要となる。例えば、仕事に活きたとかリスクを回避できたとか。

学んでいるはずだが成長の実感が無い

同じプロジェクトに長く従事していると成長を感じられなくなる。これにはコーチングが有効となる。

1on1で仕事から学んだ経験やメタ知識を掘り出してあげる。

エンジニアがアウトプットしやすい環境づくり

オープンな勉強会を会社主催で開催することで、広くフィードバックを得られるようにしている。

楽しくマネジメントを続けるためには

自己犠牲をしない。例えば、自分が行きたいイベントに参加するチャンスを安易に他の方に譲ってしまうこと。これは自分のモチベーションに影響してしまうので、やってはいけない。

楽しさにフォーカスを当てることでマネジメントを避ける人を減らしたい。

Ask The Speaker

セッション後、登壇者に質問してみました。

Q1.
本人の方向性と組織が望む方向性にずれがあるときどうするか?

A1.
1on1で話し合う時は日を分ける。今週は個人目標、来週は組織目標のように。これをまとめて話し合うことはしない。
個人目標と組織目標の方向性にずれがある場合、個人目標は給与などへ反映できないことを説明する。

Q2.
私にとってマネジメントは個人のリーダーシップを最大限引き出すことだと思っているが、山本さんはどのように考えられているか?

A2.
全員がリーダーシップをとれるわけではない。エンジニアを風林火山に分類した方がいたが、その人に適した役割をアサインすることが重要なのではないだろうか。
【参考】
風林火山の分類は小野和俊さんが提唱されたものだと思われます。下記の記事を参照ください。
プログラマー風林火山 : 小野和俊のブログ
リーダーシップについては私と山本さんの間で定義が違ったかもしれません。この点についてすり合わせたうえでお話ししてみたかったです。

所感

私はマネジメントが楽しいものだと思っています。私の場合、マネジメントする対象が小さく、気持ちよく働けるメンバーに恵まれたからという状況ではありますが、今回の発表には共感するポイントがいくつもありました。

まとめの「自己犠牲をしない」という言葉は心に響きました。というのも、仕事があまりに忙しく、周囲に迷惑をかけたくないという思いから、今回のデブサミ参加は見送ろうかと直前まで悩んでいたからです。でも、メンバーの「行くべきです。(迷惑をかけたくないからと)諦めたらだめです。」という言葉に背中を押され、今回参加することができました。今はメンバーへの感謝とともに、「自己犠牲をしない」という言葉の重みを感じています。

チーム全員が活き活きと活躍できる場をこれからも作っていきます。

デブサミ2019「【14-A-1】❤一生エンジニアを楽しもう❤夢中が最高!!」聴講メモ

はじめに

Developers Summit 2019 (Developers Summit 2019)
【14-A-1】❤一生エンジニアを楽しもう❤夢中が最高!!
スピーカー:漆原 茂 [ウルシステムズ]
の聴講メモです。

現時点で資料が公開されていないため、口頭で説明した内容だけでなく、資料の内容もなるべく盛り込みながらまとめています。

Twitterのつぶやきがtogetterでまとめられています。併せてご参照ください。
デブサミ2019【14-A-1】❤一生エンジニアを楽しもう❤夢中が最高!! #devsumiA - Togetter

【参考】としている個所は私が挿入しています(補足や参考資料など)。登壇者の講演内容ではありませんので、その旨ご了承ください。

引用した本・記事はとても内容の濃いものばかりでした。ぜひ、リンクから全文をご確認ください。

外発的動機/内発的動機

働く動機によってその後の成長が変わってくるのかを研究したグループがいる(エール大学レゼスニエウスキー教授らの研究)。

陸軍士官学校の学生の入学動機を「外発的動機」と「内発的動機」に分類し、追跡調査を行った。

  • 外発的動機
    • 役に立ちたい
    • 偉くなりたい
    • 家族を守りたい
    • お金が欲しい
  • 内発的動機
    • 楽しそう
    • 好きだから

調査の結果、内発的動機の高い方が長続きし、偉くなる傾向にあった。

【参考】

エール大学のレゼスニエウスキーらによる研究チームが、アメリカの陸軍士官学校の生徒を延べ1万人以上、10年に渡って調査して、志望動機とその後のキャリアを記録していったところ、自分の「やりたいこと」に対して、教養のため、人類のため、出世のため、などと「理由づけ」をする人ほど、長期的には結果が悪くなる傾向が出たそうです。
科学的に元気になる方法集めました(堀田秀吾、文響社

最初は外発的動機が高くても、やっているうちに内発的動機が高くなったりする。

「楽しい」は最強!楽しいから没頭するし、没頭するから成長する。

内発的動機タイプの特徴は以下の通り。

  • 一見変人に見える
  • 長期的に外発的動機タイプを凌ぐ
  • 圧倒的な没頭力で熟達する
  • 心が健康で幸せ
  • 内発的動機タイプ同士惹きつけ合う
    • お互いを高め合う

無意識の力

行動することで人間は「楽しくなる」。意識より無意識の力が強い。例を以下に挙げる。

  • 笑っているから楽しい。
  • 親切にするから気分がいい。
  • 良い仕事をするからモチベーション高い。

表情が気分に与える影響を調べた実験がある。以下の3グループに漫画を読ませた。

  • ペンをストローのようにくわえる
  • ペンを手に持ったまま無表情
  • ペンを横にして口にくわえる

実験の結果、「ペンを横にして口にくわえる」場合に漫画を面白いと感じる度合いが強まったとわかった。これはペンを横にして口にくわえたことで口角が上がり、笑顔のような表情で漫画を読んだため。

【参考】

ある実験では、大学生に鉛筆をくわえたまま漫画(ゲーリー・ラーソンの『ファーサイド(The Far Side)』)を読み、おもしろさの度合いを評価してもらった。すると横向きの鉛筆をくわえた(本人は笑っているつもりはないが)笑顔の被験者は、縦向きでしかめ面の被験者より、漫画をおもしろいと感じたのである。
ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)ダニエル・カーネマン早川書房

講演を面白くないと思って聞くから面白くなくなる。前のめりで聞けば楽しくなる。

面白そうと思うことをすぐに行動するのが大切。面白そうなセミナーを見つけたらまず申し込む(秘技:リアルタイムクリック)。スケジュールとか考えない。申し込んだ後に調整を考える。行かなければいけない状態に自分を追い込む。

長年の鍛錬

新しい技術をどんどん積み上げよう。イノベーティブは次々と起こる。一つのところに立ち止まらず、次の波に乗る。これを楽しめるかが大事になる。

一流を産むのは「長年の鍛錬」だ。フロリダ州立大学エリクソンらの研究 "The Making of an Expert" によれば、IQや天賦の才と思われていた資質は10年以上の継続的な鍛錬の結果だった。

【参考】

何かで突き抜けるためには、短期の集中も大事だが、長期にわたる鍛練も必要である。熟達研究の第一人者である、フロリダ州立大学のアンダース・エリクソン氏は、高いレベルのスキル、知識を身につけるためには、10年以上にわたる長期的な学習が必要だと述べている。
(中略)
エリクソン氏は練習の量だけではなく、練習の質にも言及しており、むしろこちらのほうが大事であると述べている。レベルを上げる練習は、単なる練習ではなく、「熟考された鍛練(deliberate practice)」である。

「一流」と「二流」を分かつものは何か? | 人材・組織開発の最新記事(コラム・調査など) | リクルートマネジメントソリューションズ

年齢と記憶力

歳を重ねても覚える能力は低下しない。実は記憶力は年齢によらない。繰り返すことで記憶が定着する。

齢と共に衰えるのは根気。貪欲に楽しむ力。これは前頭葉の衰えによる。

前頭葉は以下の理由で衰える。

  • 老化
  • ネガティブオーラ(例えば悪口)に浴びたり浴びせたりする
  • ルーチンワークを何も考えずに繰り返す

前頭葉が衰えないような環境を以下に挙げる。

  • 毎日プラスのサプライズがある
  • 良い仲間と繋がっている
  • 未来を楽しみにしている
  • 幸せオーラに溢れている

内発的動機の高い人間であることが前頭葉の衰えを防ぐ。

【参考】
記憶力・年齢・前頭葉の関係については以下の記事を参照ください。
50代の「学習意欲の低下」はどう防ぐべきか | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

インセンティブとモチベーション

外的インセンティブ(給与アップ・ボーナスなど)で内発的な動機を消し去っている。短期的な業績アップには貢献するが、長期的にはうまくいかない。

【参考】
講演で取り上げられた実験の内容をわかりやすくまとめた記事がありましたので、引用いたします。

絵を描くことが好きな園児に実験へ参加してもらい、3つのグループに分けられました。

  • Aグループ:「絵が上手に描けたら賞状をあげる」と約束をして、実際に賞状を与える
  • Bグループ:賞状をあげる約束はしないが、絵を描き終えた時に賞状を与える
  • Cグループ:約束もせず賞状も与えない

この実験から1~2週間後に、園児たちが絵を描くことがどれくらい内発的に行われているのかを測定しました。

その結果、B・Cグループの園児たちには内発的な意欲の低下は認められませんでしたが、「絵が上手に描けたら賞状をあげる」と約束されたAグループの園児たちは、内発的な意欲が低下していることがわかったのでした。

この実験から、アンダーマイニング効果を生み出すものは、報酬そのものではなく「期待させられた報酬」であることが明らかになりました。

アンダーマイニング効果 | 報酬が仇になる?やる気を奪う心理学

これまでのインセンティブ中心なマネジメントは長期的なモチベーションにとって有害といえる。

実践結果

外発的動機と内発的動機はバランスを持って両立することが大事。内発的動機が高い人も外発的動機を軽んじているわけではない。

没頭力を阻害する一因となる売上目標を撤廃した。外部には売上目標を言うが内部には言わなかった。当初数年は売上が伸びなかった。でも、エンジニアは価値を出すと信じて貫き通したら売上が伸びてきた。

内発的動機の繋がり(信頼関係)が会社よりも強くなる。営業がいなくても内発的動機の高い方たちが同じく内発的動機の高い仲間を呼び、そこから仕事が来る。個人やチーム宛に指名で仕事が来る。

転職は転職コンサルに頼むよりエンジニア同士で職を探した方が良いジョブを手に入れられる。

プラスエネルギーを発信しよう!まず良質な情報を発信しよう。あなたが何者か、まだ世界は知らない。

所感

心理学を仕事に活かすための実践的なノウハウが詰まった発表でした。私も心理学を勉強しているのですが、そこで学んだことを実践するにはどうしたものかというのが悩みでした。今回の発表はその悩みへのアンサーといえるものでした。

もしこれを機に心理学に興味を持たれた方はぜひ引用の本・記事を読んでみてください。きっと発見があるはずです。

自分で動けるとは何か ~ブログからなぜそれを感じるのか~

はじめに

このブログを読んでいただいている方から、このブログからあなたが自分で動ける方であることが分かる、と言われたことがあります。そのコメントをくれたのが一人だけならお世辞として受け止めますが、全く別の方からも同じコメントをいただき、あながちお世辞ではないのかもしれない、そう思い始めています。

そこで、このブログからなぜそのような印象を持っていただけるのかを自己分析してみたところ、それはこのブログの記事が書かれるプロセスにあるのではないかという考えに至りました。「自分で動ける」ということをブログという観点から分析した過程とその結果をまとめます。

分析のため、私の書いた記事を大きく分類分けし、それぞれにどのようなテーマ及びプロセスで書いているかをまとめます。そして、最後に全体を振り返ります。

「自分で動ける」をここでは「自発性・自主性」としました。この定義は以下の引用を参考としています。

自発性・自主性
他者の指示や意見に従ったり、あるいは他者の顔色や周りの様子をうかがったりして行動するのでなく、自らのうちにわき上がる思いや判断に基づいて行動することを、自発的と呼びます。また、他者に依存することなく、他者に責任転嫁することもなく、自らの考えと責任において行動することを、自主的と呼びます。
生徒指導提要(平成22年3月)より一部抜粋

全般

以前にこんな記事を書いていました。
このブログで目指すこと - ぱと隊長日誌
この時から「誰かの力になりたい」という思いは変わらないでいます。

基本的には世の中に無い記事を書いています。
自分より文章や説明が上手い方は多くいます。そんな方が同じテーマで素晴らしい記事を書いていたら、私は書きません。その時間をもっと他のことに費やしたいからです。
ただ例外として、同じテーマかつ同じ内容の記事でも、視点を変えて自分の考えを表現できることがあれば書くことにしています。

ブログは私の分身(正確にはその一部若しくは一面)です。だから、誰かを非難したり、傷つけるような記事は書きません。誰かに面と向かって言えないことは書かないということです。

技術系

業務では知らなくて済むとしても、気になったことを深掘りしています。

業務ではマニュアルや本の通りにすれば済むことが往々にしてあります。なぜ?と追求しなくともこなせます。そして、こなせてしまうのだから業務内でそれを深掘りする時間を確保することが困難です。

なので、私は深掘りの時間をプライベートで確保することにしています。そして、そうやって取り組んだ内容を記事としてアウトプットしています。

また、技術に関する調べ物でありがちなのは、散らばった様々な情報を集め、再構築する必要があることです。こんな時は再構築した内容を記事としています。もちろん、インプットとした情報源も明記し、後で再検証可能なようにしています。

マネジメント・リーダーシップ系

マネジメントやリーダーシップに関しては業務に直結していることが多く、とても書き辛いです。守秘義務に触れないようにエピソードを書くことが困難だからです。

そこで、本・映像・講演などから得た情報を中心に、特に重要で繰り返し振り返りたいこと、心の琴線に触れたことをまとめています。また、そこに自分が何を感じ、これからどういう取り組みをするのかも書きます。

まとめた記事は折に触れて読み返し、その頃の自分と今の自分がどう変わったのか、さらにこれから何をすべきかを考え直す機会としています。

振り返り系

人生は仕事ばかりではありません。仕事から離れた日々の生活にも気が付くことは多くあります。そんな気付きをまとめています。

特に周囲の方の言葉に耳を傾けています。周囲の方は自分以上に自分のことを知っています。そんな方々の何気ない一言の中にヒントが隠されています。この記事自体がそうやって生まれました。

頂いた言葉の中には自分の心に秘めておかねばならないものもあります。それはノートに記し、時折振り返るようにしています。

分析とまとめ

私にとってブログはアウトプットを形にするための手段です。目的ではありません。

どの分類でもブログのインプットは日々の気付きであり、探究を経て、記事というアウトプットになっていました。

気付きはよく注意していないと気が付けないほど些細なことが多いです。湧き上がる興味、ふと感じる違和感、なぜか心が揺さぶられる言葉、まずはそこに気が付くことから始まります。これが自発性の始まりでもあります。

そして、探究とはその気付きの本質が何であるかを追い求めることです。その本質を知りたいという強い思いから寝食忘れて没頭すること。周囲の一時の評価ではなく、自分の思いを信じて貫き通すこと。これが自主性の表れです。

「自分で動ける」とは気付きからその探究を行うというプロセスにあり、それがアウトプットである記事から感じられているのではないかと思うのです。

今後に向けて

「自発性・自主性」の定義を「生徒指導提要(平成22年3月)」より引用しましたが、これには続きがあります。長いのですが、そのまま引用します。

 ア 自発性・自主性
 自らの人格の完成を自ら希求する児童生徒に必要となるものは、他者から強制されなければ行わない、他者から指示されないと行わない、他者と一緒でなければ行わない、などの受動的な姿勢や態度ではなく、能動的に取り組んでいく姿勢や態度と言えます。一般に、自発性や自主性といった言葉で語られる資質がそれに当たります。
 他者の指示や意見に従ったり、あるいは他者の顔色や周りの様子をうかがったりして行動するのでなく、自らのうちにわき上がる思いや判断に基づいて行動することを、自発的と呼びます。また、他者に依存することなく、他者に責任転嫁することもなく、自らの考えと責任において行動することを、自主的と呼びます。自発的な行動や自主的な行動を支えていくような資質をはぐくんでいくことが求められます。
 イ 自律性
 自発性や自主性に基づいて行動しているだけで好ましい結果が得られるとは限りません。その時々の自分の欲求や衝動に従った行為や行動を繰り返すだけでは、自身の本意とする結果に行き着けるかどうかは分かりません。とりわけ、目先の欲求や衝動に振り回されてしまっていては、自分の欲求や衝動に自分自身が支配されている状態になってしまいます。これが、自発性や自主性とはほど遠い状態であることは言うまでもありません。
 そこで必要になるのが、自分の欲求や衝動をそのまま表出したり行動に移したりするのではなく、必要に応じて抑えたり、計画的に行動することを促したりする資質です。一般に、自律性といった言葉で語られる資質がそれに当たります。自分の欲求や衝動を含めて自らが律することなしに、人格の完成は期待できません。自律的な行動ができる資質をはぐくんでいくことが求められるのです。
 ウ 主体性
 学校においても実際の社会においても、自発的・自主的・自律的に行動できることばかりではありません。あらかじめ行動する内容が決められていたり、自分が中心となって行動できるとは限らなかったり、既存の計画に従って行動することが求められたりする場合が少なくないのです。
 そうした場合、行動することを拒否するか、反対に自分の意志や欲求を抑えて行動するか、という二者択一に陥りがちです。しかし、もう一つ、主体性を持って行動する、という選択肢もあります。与えられたものであっても、自分なりの意味付けを行ったり、自分なりの工夫を加えたりすることで、単なる客体として受動的に行動するのでなく、主体として能動的に行動する余地がある場合が多いからです。限られた条件の中であっても、主体的に取り組もうとする資質をはぐくんでいくことも求められています。
生徒指導提要(平成22年3月)

「自分で動ける」とは自分勝手に思うがままにふるまうのではなく、自発性・自主性・自律性・主体性の全てを成立させ、リーダーシップを発揮するということです。今一度自分を振り返り、今後の行動を考えていきます。