先日、スクールカウンセラーを仕事にされている方とお話をする機会があった。他愛ない雑談の中、私が「傾聴の実践が中々難しくて」と話したとき、ハッとさせられる一言が返ってきた。「傾聴のような来談者中心療法が全てではない。行動療法のほうが有効な場合もある。相手や状況に応じて手段を使い分けるべきだ。」と。
その後も考えを進めるうちに、これはマネジメントについても同様ではないか、と思い至った。これまで、プロジェクトメンバーに対しては傾聴し、相手の意見を尊重するようにしてきた。だが、メンバーの考えは必ずしもチームや会社全体の方向性と一致するとは限らない。私にとって、このずれをどう扱うべきかというのが悩みの種だった。
そこで、先の言葉を受けて考え直してみた。まず大切なことはリーダーとしてこのプロジェクトで何を成し遂げるのか、というゆるぎない信念を持つことだ。そして、マネージャーとしてメンバーの考えの多様性を認めつつ、進むべき方向性を示すことだ。
メンバーの考え・想いを傾聴することで多様性を認めることにつながる。その重要性は変わらない。その上で、個人の考えとチームや会社としての方針のギャップを互いに認識し、よりよい方向を模索する。ギャップが必ずしも埋まるとは限らない。時にはリーダーとしての信念に照らし、マネージャーとして決断しなければいけないことだってある。
「7つの習慣」でスティーブン・R・コヴィーはこう記している。『マネジメントはボトムライン(最終的な結果)にフォーカスし、目標を達成するための手段を考える。それに対してリーダーシップはトップライン(目標)にフォーカスし、何を達成したいかを考える。ピーター・ドラッカーとウォーレン・ベニスの言葉を借りるなら、「マネジメントは正しく行う事であり、リーダーシップは正しいことを行う」となる。(引用:完訳 7つの習慣 人格主義の回復)』
目標を達成するためにメンバーの力は欠かせない。この力を引き出すための基礎技術の一つとして傾聴があり、他の多くの技術と組み合わせることで最大限に発揮される。リーダーとマネージャという2つの役割の違いを理解して実践することがプロジェクトを率いるものとしての責務なのだと考えている。
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