ぱと隊長日誌

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NHKリーダーシップ白熱教室第6回(世界が君を待っている)まとめ

はじめに

NHKの白熱教室シリーズにハーバード ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ教授による「リーダーシップ論」がある。
http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/leadership/index.html

ハイフェッツ教授は「権威とリーダーシップは別物である」とし、リーダーシップとは何なのか。それを発揮するためにはどうしたらよいのか。という事を全6回の講義で解説している。

今回、再放送を改めて見直して、まとめることを思い立った。ただ、第1~5回についてはとても良くまとめられたエントリ(ブログ)がある。
今日も思考は垂れ流し: 【知見】リーダーシップ白熱教室(第1回)
今日も思考は垂れ流し: 【所感】リーダーシップについて(NHK白熱教室まとめ 第2回)
今日も思考は垂れ流し: 【所感】リーダーシップについて(NHK白熱教室まとめ 第3回)
今日も思考は垂れ流し: 【所感】リーダーシップについて(NHK白熱教室まとめ 第4回)
今日も思考は垂れ流し: 【所感】リーダーシップについて(NHK白熱教室まとめ 第5回)
紹介したこのブログでは第6回分が抜けているため、このエントリでまとめてみる。

テーマ

どうすればリーダーシップの実践の中で消耗せずに生き残れるか?
その高い志を失わず、活動し続けるためにどうすべきか?

新しい価値観への移行

リーダーシップとは人々が変革を乗り切れるようにサポートすることだ。人はそれぞれ異なる意見を持っており、言い争いや論争を通じ、時間をかけてゆっくりと新しいやり方を学んでゆく。

大きな変革であっても文化的なDNA全体を見たとき、DNAの大部分は失われず保たれる。捨てられるのはごく一部だ。だが、その変革される部分があるからこそ、歴史の最良の部分を未来へもっていくことができる。文化の中核をなすもの、価値観、伝統などの中心的な部分は失われずに保たれる。

変化への抵抗

人は変化が良い事だと判っているときは喜んで変化を受け入れる。例えば、宝くじが当たったのに受け取らない人はいない。

人が変化に抵抗するのはリスクを伴うか、何かを失いそうな時だ。失われるものについて、人々にありのままを見せる必要がある。本質的なものを残すために何かを失う事の価値を説明する。人間は理由さえ納得できれば失う苦しみも受け止めることができる。

戦略

戦略を立てる上で外せないのは、誰に話を持って行き、誰と力を合わせ、誰と信頼関係を築けばいいのか特定することだ。そして、それらの人に近付き、話に耳を傾けてみることだ。

大きい集団(例えば地域)に対してリーダーシップを発揮しようとするのであれば、まずは小さい集団(家族)にアプローチする必要がある。小さい集団は大きい集団の縮図であり、テストケースとなる。

集団の各グループの中で味方を見つけなければいけない。リーダーシップを発揮する際に犯しがちな間違いは孤立して残り全員の攻撃を受けることだ。だから、味方を見つける必要がある。

リーダーシップの実践と思考のスピード

リーダーシップが発揮されるのはゆっくりした変化の過程だ。失敗することはある。失敗したらそれを修正し、また挑戦する。積み重ねていくことで新しい未来を創り出す。リーダーシップは、日々、次はどんな手を打つべきか、次はどう話すべきかと考えることの中に宿っている。

これに対し、リーダーシップを発揮する立場の人間の思考回路はゆっくりではいけない。状況の変化に素早く対応し、常に微調整していかなければならない。

国家内外の争いへのアプローチ

戦略はひとつだけではない。

最も重要な原則は、何より命を落とさないこと。そして、素早く決断を下すことだ。

バルコニーに立つ

現場である第一線から下がって、バルコニーに立つことが必要だ。バルコニーの上からなら、現場の視点でも見られるし、大きな視点でも見られる。変革しようとしている対象の隅々まで見渡すことができる。

変革のための行動を起こした後も、常に分析し診断しながら進まなければならない。人々が違う考え方を取り入れるのには時間がかかる。リーダーシップというのは、診断と行動の繰り返しだ。

パートナーを得る

単独で改革を成し遂げることはできない。パートナーが絶対に必要だ。一人より二人のほうがより強くなれる。家族やコミュニティからの圧力に耐え易くなる。

パートナーには「協力者」と「相談役」がいる。

協力者とは、基本的なものの考え方が自分と同じだけれども、違うグループを代表する人だ。協力者がいれば、人々が新しい考え方に注目してくれる可能性を高めることができる。ただ、協力者には忠誠を尽くさねばならない仲間がいる。時として、協力者はあなたと仲間の板挟みになる。協力者と分かち合う情報には慎重を期しなければならない。

相談役とは利害関係がなく、何でも分かち合える相手だ。相談役はその案件ではなく、あなた自身に気をかけてくれる。絶望したときに元気付けてくれる。壁にぶつかりどうしようもないように思えるとき、リーダーシップを発揮することの価値を思い出させてくれる。そんな相手が必要だ。ただ、案件によって利害関係が発生し、別の相談役を見つけないといけないこともある。

リーダーシップの始まり

リーダーシップとは、愛する者のためになる事をしたいと思うことから始まる。何であれ、あなたの心を動かすことでなければ駄目だ。なぜなら、リーダーシップの発揮には厳しい道のりが待ち受けている。大変な仕事になる。情熱を持てないことなら無理だ。

自分が自分であるために

リーダーシップを発揮する過程で、孤独と絶望の日々が訪れるかもしれない。この局面を乗り切るためにもパートナーが必要だ。

また、自分自身に戻れる聖域が必要だ。祈りでも瞑想でも散歩でも、バーでスコッチの氷を眺める事でもいい。とにかく聖域を持つこと。そこで心身をいやし、再び戦いの場への出ていく英気を養うのだ。

最後に

私たちは「数値化の世界」に住んでいる。数値化に慣れると数値化が真実を表していると思うようになりがちだ。だが、数値化できない真実はたくさんある。この事はリーダーシップを実践し、目標を達成できなかったという結果を突き付けられた時に重要だ。

リーダーシップを実践する人が絶望に陥ってしまうケースのひとつに、まだ達成できていないことばかりを見てしまうときがある。あるいは「善は数値化できる」と考え、もっともっと数値を上げようと思ってしまう。だが、自分が達成したいと願うことの全てを達成することはできない。

リーダーシップの実践に必要なのは「人々に対して愛情を注ぐ」という行動を通し、小さな善を行えたという自分の成果を嬉しく思うことである。

君たちに力在れ!

著書

最前線のリーダーシップ

最前線のリーダーシップ

ロナルド・ハイフェッツとマーティー・リンスキーの共著。今回の講義のベースとなっている。
この本では講義でも取り上げられた「バルコニー席に上がる」「技術的な問題と適応が必要な問題を見極める」を様々なケーススタディから説明している。また、「リーダーシップの危険」「リーダーシップの発揮」「リーダーシップの原点」について説明している。
本の範囲は講義をすべてカバーするものではなく、その逆もまたしかり。講義は本の内容を踏まえ、そのエッセンスを紹介しながら新たな事例紹介を含め、より発展した議論へと導いている。
講義と併せて読むことで、リーダーシップへの理解がより深まる。

更新情報

2016/07/20

  • 著書情報を追加した。