デブサミ2019「【14-A-1】❤一生エンジニアを楽しもう❤夢中が最高!!」聴講メモ
はじめに
Developers Summit 2019 (Developers Summit 2019)
【14-A-1】❤一生エンジニアを楽しもう❤夢中が最高!!
スピーカー:漆原 茂 [ウルシステムズ]
の聴講メモです。
現時点で資料が公開されていないため、口頭で説明した内容だけでなく、資料の内容もなるべく盛り込みながらまとめています。
Twitterのつぶやきがtogetterでまとめられています。併せてご参照ください。
デブサミ2019【14-A-1】❤一生エンジニアを楽しもう❤夢中が最高!! #devsumiA - Togetter
【参考】としている個所は私が挿入しています(補足や参考資料など)。登壇者の講演内容ではありませんので、その旨ご了承ください。
引用した本・記事はとても内容の濃いものばかりでした。ぜひ、リンクから全文をご確認ください。
外発的動機/内発的動機
働く動機によってその後の成長が変わってくるのかを研究したグループがいる(エール大学レゼスニエウスキー教授らの研究)。
陸軍士官学校の学生の入学動機を「外発的動機」と「内発的動機」に分類し、追跡調査を行った。
- 外発的動機
- 役に立ちたい
- 偉くなりたい
- 家族を守りたい
- お金が欲しい
- 内発的動機
- 楽しそう
- 好きだから
調査の結果、内発的動機の高い方が長続きし、偉くなる傾向にあった。
【参考】
エール大学のレゼスニエウスキーらによる研究チームが、アメリカの陸軍士官学校の生徒を延べ1万人以上、10年に渡って調査して、志望動機とその後のキャリアを記録していったところ、自分の「やりたいこと」に対して、教養のため、人類のため、出世のため、などと「理由づけ」をする人ほど、長期的には結果が悪くなる傾向が出たそうです。
科学的に元気になる方法集めました(堀田秀吾、文響社)
最初は外発的動機が高くても、やっているうちに内発的動機が高くなったりする。
「楽しい」は最強!楽しいから没頭するし、没頭するから成長する。
内発的動機タイプの特徴は以下の通り。
- 一見変人に見える
- 長期的に外発的動機タイプを凌ぐ
- 圧倒的な没頭力で熟達する
- 心が健康で幸せ
- 内発的動機タイプ同士惹きつけ合う
- お互いを高め合う
無意識の力
行動することで人間は「楽しくなる」。意識より無意識の力が強い。例を以下に挙げる。
- 笑っているから楽しい。
- 親切にするから気分がいい。
- 良い仕事をするからモチベーション高い。
表情が気分に与える影響を調べた実験がある。以下の3グループに漫画を読ませた。
- ペンをストローのようにくわえる
- ペンを手に持ったまま無表情
- ペンを横にして口にくわえる
実験の結果、「ペンを横にして口にくわえる」場合に漫画を面白いと感じる度合いが強まったとわかった。これはペンを横にして口にくわえたことで口角が上がり、笑顔のような表情で漫画を読んだため。
【参考】
ある実験では、大学生に鉛筆をくわえたまま漫画(ゲーリー・ラーソンの『ファーサイド(The Far Side)』)を読み、おもしろさの度合いを評価してもらった。すると横向きの鉛筆をくわえた(本人は笑っているつもりはないが)笑顔の被験者は、縦向きでしかめ面の被験者より、漫画をおもしろいと感じたのである。
ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)(ダニエル・カーネマン、早川書房)
講演を面白くないと思って聞くから面白くなくなる。前のめりで聞けば楽しくなる。
面白そうと思うことをすぐに行動するのが大切。面白そうなセミナーを見つけたらまず申し込む(秘技:リアルタイムクリック)。スケジュールとか考えない。申し込んだ後に調整を考える。行かなければいけない状態に自分を追い込む。
長年の鍛錬
新しい技術をどんどん積み上げよう。イノベーティブは次々と起こる。一つのところに立ち止まらず、次の波に乗る。これを楽しめるかが大事になる。
一流を産むのは「長年の鍛錬」だ。フロリダ州立大学エリクソンらの研究 "The Making of an Expert" によれば、IQや天賦の才と思われていた資質は10年以上の継続的な鍛錬の結果だった。
【参考】
何かで突き抜けるためには、短期の集中も大事だが、長期にわたる鍛練も必要である。熟達研究の第一人者である、フロリダ州立大学のアンダース・エリクソン氏は、高いレベルのスキル、知識を身につけるためには、10年以上にわたる長期的な学習が必要だと述べている。
「一流」と「二流」を分かつものは何か? | 人材・組織開発の最新記事(コラム・調査など) | リクルートマネジメントソリューションズ
(中略)
エリクソン氏は練習の量だけではなく、練習の質にも言及しており、むしろこちらのほうが大事であると述べている。レベルを上げる練習は、単なる練習ではなく、「熟考された鍛練(deliberate practice)」である。
年齢と記憶力
歳を重ねても覚える能力は低下しない。実は記憶力は年齢によらない。繰り返すことで記憶が定着する。
齢と共に衰えるのは根気。貪欲に楽しむ力。これは前頭葉の衰えによる。
前頭葉は以下の理由で衰える。
- 老化
- ネガティブオーラ(例えば悪口)に浴びたり浴びせたりする
- ルーチンワークを何も考えずに繰り返す
前頭葉が衰えないような環境を以下に挙げる。
- 毎日プラスのサプライズがある
- 良い仲間と繋がっている
- 未来を楽しみにしている
- 幸せオーラに溢れている
内発的動機の高い人間であることが前頭葉の衰えを防ぐ。
【参考】
記憶力・年齢・前頭葉の関係については以下の記事を参照ください。
50代の「学習意欲の低下」はどう防ぐべきか | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
インセンティブとモチベーション
外的インセンティブ(給与アップ・ボーナスなど)で内発的な動機を消し去っている。短期的な業績アップには貢献するが、長期的にはうまくいかない。
【参考】
講演で取り上げられた実験の内容をわかりやすくまとめた記事がありましたので、引用いたします。
絵を描くことが好きな園児に実験へ参加してもらい、3つのグループに分けられました。
- Aグループ:「絵が上手に描けたら賞状をあげる」と約束をして、実際に賞状を与える
- Bグループ:賞状をあげる約束はしないが、絵を描き終えた時に賞状を与える
- Cグループ:約束もせず賞状も与えない
この実験から1~2週間後に、園児たちが絵を描くことがどれくらい内発的に行われているのかを測定しました。
その結果、B・Cグループの園児たちには内発的な意欲の低下は認められませんでしたが、「絵が上手に描けたら賞状をあげる」と約束されたAグループの園児たちは、内発的な意欲が低下していることがわかったのでした。
この実験から、アンダーマイニング効果を生み出すものは、報酬そのものではなく「期待させられた報酬」であることが明らかになりました。
アンダーマイニング効果 | 報酬が仇になる?やる気を奪う心理学
これまでのインセンティブ中心なマネジメントは長期的なモチベーションにとって有害といえる。
実践結果
外発的動機と内発的動機はバランスを持って両立することが大事。内発的動機が高い人も外発的動機を軽んじているわけではない。
没頭力を阻害する一因となる売上目標を撤廃した。外部には売上目標を言うが内部には言わなかった。当初数年は売上が伸びなかった。でも、エンジニアは価値を出すと信じて貫き通したら売上が伸びてきた。
内発的動機の繋がり(信頼関係)が会社よりも強くなる。営業がいなくても内発的動機の高い方たちが同じく内発的動機の高い仲間を呼び、そこから仕事が来る。個人やチーム宛に指名で仕事が来る。
転職は転職コンサルに頼むよりエンジニア同士で職を探した方が良いジョブを手に入れられる。
プラスエネルギーを発信しよう!まず良質な情報を発信しよう。あなたが何者か、まだ世界は知らない。
所感
心理学を仕事に活かすための実践的なノウハウが詰まった発表でした。私も心理学を勉強しているのですが、そこで学んだことを実践するにはどうしたものかというのが悩みでした。今回の発表はその悩みへのアンサーといえるものでした。
もしこれを機に心理学に興味を持たれた方はぜひ引用の本・記事を読んでみてください。きっと発見があるはずです。